心臓の病気を患った際、治療のステージが進むにつれて「内科」から「外科」へのバトンタッチが行われることがあります。この心臓血管外科という診療科は、まさに医療のラストリゾートとも呼べる場所であり、循環器内科との密接なチーム医療によって成り立っています。心臓血管外科を訪れる患者さんの多くは、循環器内科で行われたカテーテル検査や造影CTによって、薬や血管内治療だけでは根治が難しいと判断された方々です。例えば、心臓に酸素を送る冠動脈が何箇所も詰まっていてカテーテルでは広げきれない場合に行われる冠動脈バイパス手術や、血液の逆流を防ぐ弁が壊れてしまった際に行われる弁形成術・弁置換術などが、外科医の腕の見せ所となります。かつての心臓手術は胸を大きく切り開く侵襲の大きなものが主流でしたが、現代の心臓血管外科では、小さな切開から内視鏡やロボットを駆使して行う低侵襲心臓手術(MICS)も普及しており、患者さんの身体的負担は劇的に軽減されています。また、大動脈瘤という血管のコブに対して行われるステントグラフト内挿術のように、外科医と内科医がハイブリッド手術室で協力して行う治療も増えています。何科を受診すべきかという問いに対して、最初から外科を選ぶケースは稀ですが、心臓の持病を長く抱えている人にとっては、外科医の存在は非常に心強いバックアップとなります。外科治療は「構造そのものを治す」ため、成功すれば劇的な症状の改善と、予後の延長が期待できます。手術と聞くと誰もが恐怖を感じるものですが、現代の心臓血管外科における成功率は極めて高く、手術後のリハビリテーションプログラムも確立されています。医師たちは、心臓という休むことのない臓器を一時的に人工心肺装置に委ね、その間に精密な手技で修復を施します。このような高度な医療を受けられるのは、循環器内科での的確な初期診断があってこそです。つまり、診療科の選び方として最も理想的なのは、内科と外科がしっかりと連携している総合病院や、ハートチームを持つ専門病院を主治医に持つことです。心臓の健康を維持するためには、内科的な管理で病気の進行を抑えつつ、もしもの時には外科的な介入がスムーズに行える体制の中に身を置くことが、最も賢明なリスク管理と言えるでしょう。