私が肺がんという診断を受けたきっかけは、今振り返ればほんの些細な夜の咳からでした。当初は仕事の疲れが溜まっているのだろうとか、寝室の空気が乾燥しているせいだろうと軽く考えていました。しかし、2週間を過ぎたあたりから、日中は全く出ない咳が、夜に布団に入った途端にコンコンと出始めるようになったのです。最初は飴を舐めたり加湿器を最強にしたりして凌いでいましたが、1ヶ月が経過する頃には、咳の勢いで夜中に何度も目が覚めるほど悪化していました。それでも私は「肺がん」という言葉を自分のこととして捉えることができませんでした。なぜなら、私はタバコも吸いませんし、家族にがんを患った人もいなかったからです。ようやく重い腰を上げて近所の内科を受診したのは、咳が始まってから2ヶ月が経過し、痰にうっすらとピンク色の血が混じったのを見た時でした。医師から大きな病院での精密検査を勧められた時のあの血の気が引くような感覚は、今でも鮮明に覚えています。紹介された病院でCT検査を受けた結果、左の肺に3センチほどの影が見つかり、その後の生検で腺がんという種類の肺がんであることが判明しました。医師の説明によれば、私の腫瘍は気管支の近くに位置していたため、横になることで気道が圧迫され、夜間に激しい咳が出ていたそうです。幸いにも、他の臓器への転移は見られず、手術で切除することが可能でしたが、もしあのまま「ただの風邪」だと思い込んでさらに数ヶ月放置していたら、今こうして体験談を綴ることはできなかったかもしれません。この経験から私が伝えたい教訓は、自分の感覚を過信しないこと、そして「夜の咳」という体からのサインを甘く見ないことです。肺がんはタバコを吸わない女性にも増えている病気であり、咳以外の症状がほとんど出ないケースも多いのです。夜になると咳が出る、その状態が数週間続いているという方は、たとえ他の体調が良くても、迷わず検査を受けてください。検査の結果、何事もなければそれで安心できますし、もし何かが見つかったとしても、早期であればあるほど救われる可能性は高くなります。私の場合は、夜の咳が命を救ってくれた警告音だったのだと、今では前向きに捉えるようにしています。
夜の咳が止まらず肺がんと診断された私の実体験と教訓