子育て世代の親にとって、夏という季節は、子供たちの成長を喜ぶ、楽しいイベントに満ち溢れていると同時に、様々な感染症との戦いの季節でもあります。そして、その中でも、多くの親が、毎年戦々恐々としながらその流行の報に耳を傾けるのが、「手足口病」です。保育園や幼稚園で、一人が発症すれば、あっという間にクラス中に広がる、その驚異的な感染力。そして、親にとっての最大の恐怖は、そのウイルスが、家庭内に持ち帰られ、看病する自分自身に襲いかかってくることです。子供からもらう、大人の手足口病。それは、子を持つ親に与えられた、過酷な試練の一つと言えるかもしれません。子供が手足口病にかかった時、親は、まず我が子のつらそうな姿に心を痛めます。熱でぐったりとし、口の中の痛みで、大好きなご飯も食べられず、泣きじゃくる我が子。親は、少しでもその苦痛を和らげようと、必死で看病にあたります。しかし、その献身的な看病こそが、皮肉にも、自分自身への感染リスクを最大限に高めてしまうのです。子供のよだれがついたおもちゃを片付け、食べ残しを処理し、そして、ウイルスが大量に含まれたおむつを交換する。その全ての行為が、ウイルスとの濃厚接触となります。そして、数日の潜伏期間を経て、親自身の体に、あの激烈な症状が現れ始めます。ここからが、本当の試練の始まりです。自分自身が、四十度近い高熱と、全身の激痛で、立っているのもやっとの状態であるにもかかわらず、病気の子供の世話を、休むことなく続けなければならないのです。自分の食事さえままならないのに、子供のために、痛くないようにと工夫を凝らした食事を作り、ぐずる子供をあやし、寝かしつける。それは、まさに心身の限界を超えた、壮絶な戦いです。パートナーと協力し、祖父母などのサポートを得られれば、まだ救いはあります。しかし、ワンオペ育児の状況下で、この事態に陥ってしまった場合の過酷さは、想像を絶します。子供からもらう手足口病は、単なる病気ではありません。それは、親としての愛情と、責任と、そして忍耐力の全てが試される、極限状況での耐久レースなのです。この試練を乗り越えるために、何よりも大切なのは、一人で抱え込まず、利用できる全てのサポートを、ためらわずに求める勇気を持つことなのかもしれません。
子供からもらう手足口病という親の試練