健康診断で「脂質異常症」や「コレステロール値が高い」と指摘されたものの、体に痛みやかゆみといった自覚症状が全くないため、「まあ、大丈夫だろう」「まだ若いから」と、つい結果を放置してしまってはいませんか。その判断は、実は非常に危険です。脂質異常症の最も恐ろしい点は、まさにその「自覚症状がない」という点にあります。水面下で静かに、しかし着実に、あなたの血管を蝕んでいく「サイレントキラー(沈黙の暗殺者)」、それこそが脂質異常症の本当の姿なのです。脂質異常症とは、血液中のLDL(悪玉)コレステロールや中性脂肪(トリグリセライド)が多すぎる、あるいはHDL(善玉)コレステロールが少なすぎる状態を指します。この状態が長く続くと、余分な脂質が血管の内壁に少しずつ蓄積し、血管が硬く、そして狭くなる「動脈硬化」が進行していきます。動脈硬化は、それ自体が直接的な症状を引き起こすことはありません。しかし、血管の狭くなった部分に血栓(血の塊)が詰まると、事態は一変します。その詰まった先が心臓の血管(冠動脈)であれば、ある日突然、激しい胸の痛みに襲われる「心筋梗塞」を。脳の血管であれば、麻痺や言語障害を引き起こす「脳梗塞」を発症するのです。これらの病気は、命を奪うだけでなく、たとえ一命を取り留めたとしても、その後の人生に深刻な後遺症を残す可能性があります。健康診断で指摘された異常値は、あなたの体が発している、未来の危険を知らせる重要な警告サインです。自覚症状がない今のうちに、専門家である医師の診断を仰ぎ、適切な対策を始めること。それこそが、サイレントキラーの静かなる脅威から、あなた自身の未来と、大切な家族の暮らしを守るための、最も賢明で、そして唯一の正しい選択と言えるのです。