子どもが手足口病と診断された時、仕事を持つ保護者にとっては、いつから保育園や幼稚園に登園させられるのかが、非常に切実な問題となります。この登園基準を考える上で、手足口病が「うつる」期間の特性を理解しておくことが重要です。前述の通り、手足口病は症状が治まった後も、長期間にわたって便からウイルスが排出されるという特徴があります。このウイルス排出が完全になくなるまで登園を停止すると、1ヶ月以上も休まなければならず、現実的ではありません。そのため、学校保健安全法では、手足口病はインフルエンザや麻疹のように「出席停止期間」が明確に定められている第2種感染症ではなく、「その他の感染症」に分類されています。これは、登園を停止する基準が、一律に「解熱後◯日」などと決まっているわけではなく、個々の症状や状態によって判断されることを意味します。では、登園再開の具体的な目安は何でしょうか。厚生労働省のガイドラインなどでは、登園の目安として「解熱し、全身状態が安定しており、普段通りに食事がとれること」が挙げられています。つまり、熱がなく、子どもの機嫌が良く、活気があり、食欲も戻っていれば、たとえ手足に発疹が残っていたとしても、医学的には集団生活に戻ることが可能と判断されるのです。発疹自体には、感染力はほとんどないと考えられています。しかし、これはあくまで一般的な医学的見解です。実際には、多くの保育園や幼稚園では、園独自のルールを設けており、登園を再開する際には、医師が記入した「登園許可書」や「治癒証明書」の提出を求められることがほとんどです。これは、集団内での感染拡大を可能な限り防ぐための措置です。したがって、保護者が自己判断で「元気になったから登園させよう」と決めるのではなく、必ず一度、かかりつけの小児科医の診察を受けてください。医師が子どもの全身状態を評価し、「集団生活に支障なし」と判断して初めて、登園許可書が発行されます。その上で、園の規定に従って登園を再開するのが、最もスムーズでトラブルのない手順です。登園再開後も、しばらくはウイルスが排出されていることを念頭に置き、家庭での手洗いの徹底などを継続することが大切です。