熱帯夜が続き、寝苦しさから解放されたい一心で、エアコンや扇風機をつけたまま眠りについてしまう。これは、多くの人が夏に行う習慣ですが、実はこれが翌朝のつらい下痢の引き金となる「寝冷え」の原因となっています。私たちの体は、睡眠中、特に深い眠りに入ると、日中の活動期に比べて体温が少し下がります。また、体温を調節するために、知らず知らずのうちに大量の汗をかいています。汗が蒸発する際には、気化熱によって体の表面から熱が奪われ、さらに体温が下がりやすくなります。このような無防備な状態で、一晩中、冷たい風にさらされ続けると、体、特に衣服で覆われていない、あるいは薄着になりがちなお腹周りが、必要以上に冷やされてしまうのです。お腹が冷えると、胃腸の働きに直接的な影響が及びます。まず、腸壁の血管が収縮し、血行が悪くなることで、消化機能が低下します。さらに、冷えという刺激が自律神経に作用し、腸の蠕動運動をコントロールするバランスを乱します。特に、腸が冷やされると、それを異常事態と捉え、腸の動きが過剰に活発になることがあります。腸が活発に動きすぎると、食べ物が腸内を通過するスピードが速くなりすぎて、便から水分が十分に吸収される前に、肛門まで到達してしまいます。その結果、便が水っぽい、いわゆる下痢の状態となって排出されるのです。朝起きてすぐにお腹がゴロゴロ鳴ったり、トイレに駆け込んだりするような下痢は、この寝冷えが原因である可能性が高いと考えられます。寝冷えによる下痢を防ぐためには、睡眠環境の工夫が不可欠です。まず、エアコンを使用する場合は、必ず「タイマー機能」を活用しましょう。就寝後1~3時間で切れるように設定するのがお勧めです。タイマーが切れた後も快適に眠れるよう、寝室の壁や天井に向けて間接的に風を送るなど、風が体に直接当たらないように工夫します。扇風機の場合も同様で、首振り機能を利用し、微風に設定するのが基本です。服装も重要です。夏用の薄手の長袖・長ズボンのパジャマを着用し、特にお腹周りを冷やさないようにしましょう。それでも冷えが心配な方は、「腹巻」や「夏用の薄いタオルケット」などを活用し、お腹を重点的に保温するのが非常に効果的です。快適な睡眠と、健やかなお腹を両立させるために、夏の夜の「冷え対策」をぜひ実践してみてください。