夏に流行する子どもの感染症で、高熱と口の中の発疹を特徴とするものに、ヘルパンギーナとよく似た「手足口病」があります。どちらも同じエンテロウイルス属のウイルスが原因となることが多く、症状も似ているため、保護者の方が混乱することも少なくありません。しかし、それぞれの病気には、特に発疹が現れる場所に明確な違いがあり、それが鑑別の重要なポイントとなります。最も大きな違いは、その名の通り、発疹が「喉の奥に限局するか、手足にも広がるか」という点です。ヘルパンギーナの発疹(水疱や潰瘍)は、原則として口の中、それも喉の奥の、上顎の柔らかい部分(軟口蓋)や、のどちんこの両脇(口蓋弓)といった部分に集中して現れます。手や足、体の他の部分に発疹が出ることはありません。一方、手足口病の場合は、口の中の発疹に加えて、その名の通り「手のひら」や「足の裏、足の甲」、さらには「お尻」や「膝」などにも、米粒大の赤い発疹や水ぶくれができます。したがって、子どもが喉の痛みを訴えた際には、必ず手と足の裏を確認することが、鑑別の第一歩となります。また、口の中の発疹の分布にも、若干の傾向の違いが見られます。ヘルパンギーナは、前述の通り喉の「奥」が主戦場ですが、手足口病の場合は、喉の奥だけでなく、舌や頬の内側の粘膜、歯茎といった、より口の「前方」にも発疹ができやすいという特徴があります。ヘルパンギーナの痛みは主に嚥下痛ですが、手足口病では舌や頬の潰瘍の痛みで、食事そのものが困難になることもあります。どちらの病気もウイルス性のため、治療法は対症療法が中心という点では同じですが、症状の広がりを正しく理解しておくことが、適切なケアに繋がります。