高熱と咳が続くものの、肺炎球菌などによる典型的な肺炎とは少し様子が違う。痰はあまり絡まず、コンコン、ケンケンといった乾いた咳が、一度出始めると止まらなくなるほどしつこく続く。胸のレントゲンを撮っても、肺炎に特徴的なハッキリとした影が見られないこともある。このような場合に疑われるのが、「非定型肺炎」です。非定型肺炎とは、その名の通り、典型的な肺炎とは異なる特徴を持つ肺炎の総称で、その主な原因となるのが「マイコプラズマ」と「クラミジア」という微生物です。これらの微生物は、細菌とウイルスの中間のような性質を持ち、一般的な細菌性肺炎の治療に用いられるペニシリン系やセフェム系の抗生物質が効かない、という大きな特徴があります。特に「マイコプラズマ肺炎」は、幼児から若い成人に多く見られ、学校や家庭内などで集団感染を起こすこともあります。潜伏期間が2~3週間と長く、初期は発熱、倦怠感、頭痛といった症状で始まり、少し遅れてから、頑固で激しい乾いた咳が出現します。熱は、38度以上の高熱が続くこともあれば、微熱が長引くこともあり、様々です。喉の痛みも強く、全身症状が強い割には、聴診やレントゲンでの所見が乏しいことも、この病気の特徴です。一方、「クラミジア肺炎」も同様に、乾いた咳と発熱が主な症状ですが、高齢者にも比較的多く見られ、嗄声(声がれ)を伴うことが多いとされています。これらの非定型肺炎が疑われる場合、受診すべきは「内科」または「呼吸器内科」です。診断のためには、血液検査でマイコプラズマやクラミジアに対する抗体の量を測定したり、近年では喉のぬぐい液などを用いた遺伝子検査(PCR法など)が行われたりします。治療には、これらの微生物に有効な、特殊なタイプの抗生物質が必要です。具体的には、「マクロライド系」(クラリスロマイシン、アジスロマイシンなど)や、「テトラサイクリン系」(ミノサイクリンなど)、「ニューキノロン系」の抗生物質が用いられます。適切な抗生物質を服用すれば、劇的に症状が改善することが期待できます。原因不明のしつこい咳と熱が続く場合は、非定型肺炎の可能性も念頭に、専門医の診察を受けることが重要です。