手足口病は、子どもを中心に夏に流行する、ありふれた感染症です。しかし、その感染力の強さと、症状が治まった後も長期間にわたってウイルスが排出されるという厄介な特性から、家庭内や保育園などの集団生活の場で、容易に感染が拡大してしまいます。「うつる」という観点から、この病気の要点を再確認し、感染の連鎖を断ち切るための行動指針をまとめてみましょう。第一に、手足口病の感染経路が「飛沫」「接触」「糞口」の3つであることを理解し、それぞれに対応した対策を徹底することです。特に、症状回復後も1ヶ月以上にわたり便からウイルスが排出され続けるという事実を認識し、おむつ交換後の手洗いやトイレの後の手洗いを、家族全員で粘り強く、そして習慣として続けることが何よりも重要です。アルコール消毒だけに頼らず、石鹸と流水で物理的にウイルスを洗い流すことが基本です。第二に、感染期間の長さを理解し、社会生活とのバランスをとることです。感染力が最も強いのは症状のある急性期ですが、回復後もウイルスは排出されます。しかし、登園・登校の基準は、本人の全身状態が安定しているかどうかで判断されます。自己判断せず、必ず医師の診察を受け、園や学校の規定に従いましょう。そして、登園再開後も、家庭での感染対策は継続する必要があります。第三に、「大人がうつると重症化しやすい」「手足口病は何度もかかる可能性がある」という事実を知っておくことです。子どもが感染した際は、自分自身の感染予防にも細心の注意を払い、一度かかったからと油断しないことが大切です。手足口病には、特効薬もワクチンもありません。だからこそ、日々の地道な感染予防策が、自分自身と、家族と、そして社会全体を感染から守るための最も確実な武器となります。正しい知識を持つことが、不要な不安を和らげ、適切な行動を促し、手足口病の流行という連鎖を断ち切るための最大の力となるのです。