つらい自覚症状がないからこそ、つい後回しにしがちな、脂質異常症での病院受診。しかし、せっかく意を決して病院へ行くのであれば、その一度の診察を、最大限に有意義なものにしたいものです。限られた診察時間の中で、医師に、あなたの体の状態を正確に、そして効率的に理解してもらうためには、実は、病院に行く「前」の、ほんの少しの準備が、非常に大きな役割を果たします。ここでは、受診がスムーズに進み、より的確な診断と、あなたに合った治療方針の決定に繋がるための、準備のポイントを解説します。まず、絶対に忘れてはならない、最も重要な持参物が「健康診断の結果票」です。特に、今回の結果だけでなく、過去数年分の結果票があれば、あなたの脂質の値が、どのように推移してきたのかという、貴重な時系列データとなり、医師が病状の進行度を判断する上で、極めて重要な情報となります。次に、もし他の病気で治療を受けている場合は、「お薬手帳」も必ず持参しましょう。薬の飲み合わせなどを確認する上で不可欠です。これらの持参物に加えて、あなた自身の「生活習慣に関する情報」を、簡単なメモにまとめておくと、問診が驚くほどスムーズに進みます。医師が知りたいのは、主に以下の五つのポイントです。①「食生活の概要」:外食の頻度、肉や揚げ物、甘いものをどれくらい食べるか、野菜は好きか、など。②「運動習慣」:週に何回、どのくらいの時間、どんな運動をしているか(あるいは、全くしていないか)。③「喫煙・飲酒の習慣」:一日に吸う本数や、飲むお酒の種類と量。④「自覚症状」:めまいや動悸など、気になる症状があれば(なくても「特になし」と伝えることが重要)。⑤「家族の病歴」:あなたの両親や兄弟に、心筋梗塞や脳梗塞、あるいは高コレステロール血症になった人がいるか。これらの情報は、あなたの動脈硬化のリスクを、より正確に評価するために、医師がパズルのピースを組み合わせるようにして使われます。また、診察の最後に、「何か質問はありますか?」と聞かれた時に、慌てないように、自分が不安に思っていることや、聞いておきたいことを、予めリストアップしておくのも良いでしょう。この一手間が、医師との良好なコミュニケーションを築き、あなた自身が、納得して治療に臨むための、確かな土台となるのです。