2020年以降、大人が高熱と咳を発症した場合、誰もが「もしかして新型コロナウイルス?」と考えるようになりました。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、季節性インフルエンザと症状が非常に似ており、初期段階での鑑別は極めて困難です。そのため、適切な検査による診断が不可欠となります。新型コロナの主な症状も、発熱(高熱から微熱まで様々)、乾いた咳、強い倦怠感、喉の痛み、頭痛、筋肉痛などであり、インフルエンザと大きく重なります。しかし、初期のオミクロン株などでは、「喉にガラスが刺さったような」と表現されるほどの激しい喉の痛みが特徴的であったり、あるいは「味覚障害」や「嗅覚障害」といった、インフルエンザではあまり見られない症状が現れたりすることもありました。ただし、ウイルスの変異に伴い、症状の傾向も変化していくため、特定の症状だけで自己判断するのは危険です。高熱と咳があり、新型コロナウイルス感染症が疑われる場合は、いきなり医療機関を受診するのではなく、まずはかかりつけ医や、地域の「発熱外来」、あるいは自治体が設置する相談窓口に電話で連絡し、指示を仰ぐのが基本的な流れとなります。医療機関では、インフルエンザと同様に、鼻の奥から検体を採取する「抗原検査」や、より精度の高い「PCR検査」によって診断を確定します。治療は、軽症の場合は、解熱鎮痛薬や咳止めといった対症療法を行いながら、自宅での療養が基本となります。しかし、重症化リスクの高い高齢者や基礎疾患のある人、あるいは症状が重い場合には、ウイルスの増殖を抑える「抗ウイルス薬」(パキロビッド、ラゲブリオ、ゾコーバなど)の投与が検討されます。COVID-19で最も警戒すべきは、ウイルス性肺炎による呼吸状態の悪化です。咳がひどくなり、「息苦しさ(呼吸困難)」「胸の痛み」「顔色が悪い(チアノーゼ)」といった症状が現れた場合は、重症化のサインです。このような場合は、直ちに医療機関に連絡し、入院治療が必要となる可能性があります。感染対策としては、インフルエンザと同様に、マスクの着用、手洗い、換気が基本となります。また、重症化予防には、ワクチン接種が有効とされています。