健康診断の結果票に並ぶ、たくさんの専門用語と数字。「どの数値が、どれくらい悪いと、病院へ行くべきなの?」と、具体的な基準がわからずに、不安に思っている方も多いでしょう。脂質異常症は、血液検査における主に四つの項目の数値によって診断されます。まず、最もよく知られているのが「LDLコレステロール(悪玉コレステロール)」です。これは、増えすぎると血管壁に蓄積し、動脈硬化の直接的な原因となります。基準値は「140mg/dL未満」とされており、これを超えると高LDLコレステロール血症と診断されます。次に、「HDLコレステロール(善玉コレステロール)」です。これは、血管壁にたまった余分なコレステロールを回収してくれる、いわば「血管のお掃除役」です。そのため、この数値は低いことが問題となり、基準値は「40mg/dL以上」とされています。これを下回ると、低HDLコレステロール血症と診断されます。三つ目が、「トリグリセライド(中性脂肪)」です。これも、増えすぎると動脈硬化の原因となります。基準値は「150mg/dL以上(空腹時採血)」で、これを超えると高トリグリセライド血症とされます。そして近年、新たな指標として重視されているのが、「non-HDLコレステロール」です。これは、総コレステロールからHDLコレステロールを引いた数値で、悪玉とされるコレステロール全体の量を反映しています。基準値は「170mg/dL以上」です。これらの基準値を一つでも満たした場合、あなたは脂質異常症と診断されます。しかし、重要なのは、単に基準値を超えたからといって、すぐに薬物治療が始まるわけではない、という点です。医師は、これらの数値に加えて、あなたの年齢、性別、高血圧や糖尿病の有無、喫煙習慣、そして家族に心筋梗塞などを起こした人がいるか、といった他の危険因子を総合的に評価し、将来的な心筋梗塞のリスクがどの程度高いかを判断します。そして、そのリスクに応じて、生活習慣の改善だけで様子を見るのか、あるいはすぐに薬物治療を開始するのかを決定するのです。つまり、健康診断で「要再検査」や「要精密検査」と指摘された場合は、数値の大小にかかわらず、まずは一度、専門医による、この総合的なリスク評価を受けることが、何よりも重要となるのです。
この数値なら病院へ行くべき脂質異常症の基準