「脂質異常症で病院に行く」と決めたものの、そこで一体どのような検査が行われ、どんな治療が始まるのか、具体的な流れがわからずに、不安を感じている方もいるかもしれません。ここでは、病院で行われる基本的な検査と治療の流れについて解説します。まず、診察室で最初に行われるのが、丁寧な「問診」です。医師は、あなたの健康診断の結果票を確認しながら、普段の食生活(肉や揚げ物は好きか、野菜は摂れているかなど)、運動習慣、喫煙や飲酒の習慣、そして家族(特に親や兄弟)に心筋梗塞や脳梗塞になった人がいないか(家族歴)といった、生活習慣や遺伝的なリスクについて、詳しく質問します。これらの情報は、治療方針を決める上で非常に重要です。次に行われるのが、身長、体重、腹囲の測定と、血圧の測定といった「身体診察」です。そして、診断の確定と、治療効果の判定のために、再度「血液検査」と「尿検査」が行われます。この血液検査で、脂質異常症の診断基準となる数値を、より正確に再評価します。これらの基本的な検査に加えて、動脈硬化がどの程度進行しているかを調べるための、追加の検査が行われることもあります。その代表的なものが「頸動脈エコー(超音波)検査」です。首の動脈(頸動脈)に超音波を当てるだけの、痛みも被曝もない簡単な検査で、血管の壁の厚さや、プラーク(脂質の塊)の有無を直接観察することができます。これにより、あなたの血管の「実年齢」を知ることができるのです。これらの検査結果を総合的に判断し、医師は治療方針を決定します。脂質異常症の治療の基本、そして第一歩は、薬ではありません。必ず「生活習慣の改善」、すなわち「食事療法」と「運動療法」から始まります。医師や管理栄養士から、具体的な食事の改善点(脂質の多い食品を控える、食物繊維を多く摂るなど)や、ウォーキングなどの有酸素運動の推奨といった、専門的な指導を受けます。そして、この生活習慣の改善を数ヶ月続けても、数値が十分に改善しない場合や、あるいは最初の診断の時点で、心筋梗塞などのリスクが非常に高いと判断された場合に、初めて「薬物療法」が検討されます。治療の主役は、あくまであなた自身の生活習慣の改善です。医師はそのサポーターとして、あなたの健康づくりを伴走してくれるのです。