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  • 大人の耳下腺炎、熱なしでも要注意?考えられる原因と診療科

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    ある日、鏡を見ると、片方あるいは両方の耳の下から顎にかけての部分、いわゆる「耳下腺」がぷっくりと腫れている。しかし、熱はなく、体もだるくない。このような「熱なしの耳下腺炎」は、特に大人に起こると「ただの腫れだろう」と様子を見てしまいがちですが、その背後には様々な原因が隠れている可能性があり、自己判断は禁物です。耳下腺は、唾液を産生する三大唾液腺の中で最も大きい器官であり、ここに炎症が起こった状態を「耳下腺炎」と呼びます。一般的に「おたふくかぜ(流行性耳下腺炎)」が有名ですが、これはムンプスウイルスによる感染症で、通常は高熱を伴います。では、熱が出ない耳下腺の腫れは、一体何が原因なのでしょうか。考えられる原因は多岐にわたります。最も多いのは、おたふくかぜ以外のウイルスや細菌が原因となる「化膿性耳下腺炎」や、口の中の常在菌が原因となる「反復性耳下腺炎」です。また、唾液の通り道である導管に石が詰まる「唾石症」や、自己免疫の異常が関わる「シェーグレン症候群」、アレルギー反応、さらには稀ですが「耳下腺腫瘍」の可能性も考慮しなければなりません。このように、熱がないからといって、必ずしも軽症であるとは限りません。原因によって治療法は全く異なり、中には専門的な検査や長期的な管理が必要な病気もあります。耳下腺の腫れに気づいた時に、まず受診すべき専門診療科は「耳鼻咽喉科」です。耳鼻咽喉科医は、唾液腺の構造と病気に精通しており、触診や超音波(エコー)検査、CT検査などを用いて、腫れの原因を正確に診断することができます。この記事では、大人が経験する「熱なしの耳下腺炎」の様々な原因とその特徴について、詳しく解説していきます。

  • 最も警戒すべき「耳下腺腫瘍」の可能性と見分け方

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    熱がなく、痛みもないのに、片方の耳下腺だけが、しこりのように硬く腫れている。そして、その腫れが数ヶ月経っても消えず、むしろ少しずつ大きくなっているような気がする。このような症状の場合、最も警戒しなければならないのが「耳下腺腫瘍」の可能性です。耳下腺にできる腫瘍は、その約80%が良性であり、悪性(がん)であることは比較的稀です。しかし、良性であっても放置すれば大きくなって容姿に影響したり、稀に悪性化したりする可能性もあるため、早期の正確な診断が極めて重要です。耳下腺腫瘍と、他の炎症性の腫れとを見分けるための、いくつかの特徴があります。まず、炎症性の腫れ(耳下腺炎など)が、比較的短期間で症状が変化し、痛みや熱感を伴うことが多いのに対し、腫瘍は、通常「無痛性」で、ゆっくりと進行するのが特徴です。触ってみると、炎症では全体的にブヨブヨと腫れている感じですが、腫瘍では、弾力のあるゴムのような、あるいは石のように硬い「しこり」として触れることが多いです。また、炎症は両側に起こることもありますが、腫瘍はほとんどの場合、「片側性」に発生します。そして、最も重要な危険なサインが、「顔面神経麻痺」を伴っている場合です。耳下腺の中には、顔の表情筋を動かすための重要な神経である「顔面神経」が通っています。腫瘍がこの神経に浸潤(しんじゅん)すると、腫れている側の顔が歪んだり、目が閉じにくくなったり、口角が下がったりといった麻痺の症状が現れます。痛みと共に顔面神経麻痺が出現した場合は、悪性腫瘍である可能性が非常に高くなります。耳下腺腫瘍の診断と治療は、「耳鼻咽喉科」の中でも、特に頭頸部外科を専門とする医師が担当します。診察では、まず触診でしこりの硬さや動きを確認し、超音波(エコー)検査やCT、MRIといった画像検査で、腫瘍の大きさや場所、性質を詳しく評価します。そして、診断を確定するためには、「穿刺吸引細胞診」という検査が行われます。これは、細い針をしこりに刺して、中の細胞を少量吸引し、顕微鏡で良性か悪性かを調べる検査です。耳下腺腫瘍の治療は、良性・悪性を問わず、基本的には手術による摘出となります。心配な「しこり」に気づいたら、絶対に放置せず、専門医の診察を受けてください。

  • ごく稀だが注意すべき合併症、こんな症状はすぐ病院へ

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    手足口病は、ほとんどの場合、発熱と発疹だけで、数日から1週間程度で自然に治癒する、比較的予後の良い病気です。しかし、ごく稀ではありますが、重篤な合併症を引き起こし、後遺症を残したり、命に関わったりすることがあるため、その危険なサインを知っておくことは非常に重要です。特に、原因ウイルスが「エンテロウイルス71(EV71)」である場合に、重症化しやすい傾向があることが知られています。保護者の方は、単なる夏風邪と侮らず、病気の経過中、子どもの様子を注意深く観察してください。最も注意すべき合併症は、ウイルスが中枢神経系に感染することで起こる「急性脳炎」や「無菌性髄膜炎」です。これらの病気を疑うべき危険なサインは、「ぐったりしていて、呼びかけへの反応が悪い」「意識がもうろうとしている、視線が合わない」「頭をひどく痛がる(特に年長児の場合)」「嘔吐を何度も繰り返す」「原因不明のけいれんを起こす」といった症状です。発熱に伴う「熱性けいれん」は手足口病でも見られることがありますが、けいれんが5分以上続く、短い間隔で繰り返す、けいれん後の意識の回復が悪いといった場合は、より重篤な脳炎の可能性を考える必要があります。また、ウイルスが心臓の筋肉に感染する「心筋炎」や、肺に水がたまる「肺水腫」も、稀ですが致死的な合併症です。「顔色が悪く、唇が紫色になっている」「呼吸が速く、苦しそう」「脈が異常に速い、または弱い」といった症状が見られた場合は、循環器系や呼吸器系に異常が起きているサインかもしれません。これらの重篤な合併症は、病気の初期段階、特に高熱が出ている時期に起こりやすいとされています。したがって、「高熱が2日以上続く」「嘔吐を繰り返し、水分が全く摂れず、ぐったりしている」といった状態が見られたら、たとえ夜間や休日であっても、様子を見ずに直ちに医療機関(救急外来)を受診してください。ほとんどは軽症で済む手足口病ですが、「いつもと様子が違う」と保護者が感じた直感は、非常に重要です。子どもの重症化のサインを見逃さないために、少しでも不安な点があれば、ためらわずに医師の診察を受けるようにしましょう。

  • 稀だが重要な原因、心臓や血管、甲状腺の病気

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    首の痛みというと、どうしても首そのものの筋肉や骨、神経に原因を求めてしまいがちですが、ごく稀に、首から離れた場所にある臓器の病気が、関連痛(放散痛)として首に痛みのサインを送ってくることがあります。これらは見逃されやすいですが、中には命に関わる病気もあるため、知識として知っておくことが重要です。その代表格が「心臓」の病気、特に「狭心症」や「心筋梗塞」です。これらの病気は、心臓に血液を送る冠動脈が狭くなったり詰まったりすることで、心臓の筋肉が酸素不足に陥り、胸に強い圧迫感や締め付けられるような痛みが起こるのが典型的な症状です。しかし、この痛みは、胸だけでなく、左肩や左腕、顎、そして「首」にまで広がることがあります。これを放散痛と呼びます。もし、体を動かした時(階段を上るなど)に、胸の不快感と共に、首の左側が締め付けられるように痛くなり、休むと治まる、といった症状があれば、狭心症の可能性があります。安静にしていても痛みが治まらない場合は、心筋梗塞の危険性が高く、直ちに「循環器内科」を受診するか、救急車を呼ぶ必要があります。また、「大動脈解離」という、心臓から出る最も太い血管が裂けてしまう緊急疾患でも、胸や背中の激痛と共に、首に痛みが及ぶことがあります。次に、首の前方、喉仏の下あたりにある「甲状腺」の病気も、首の痛みの原因となります。「亜急性甲状腺炎」は、ウイルス感染などが引き金となって甲状腺に炎症が起こる病気で、首の前側の痛み、特に押すと強い痛み(圧痛)があり、その痛みは耳や顎にまで広がることがあります。発熱や全身の倦怠感を伴うことが多く、甲状腺ホルモンが一時的に過剰になるため、動悸や多汗などの症状が見られることもあります。この場合は、「内分泌内科」や「耳鼻咽喉科」が専門となります。このように、首の痛みは、必ずしも首だけの問題とは限りません。特に、動悸や息切れ、発熱といった全身症状を伴う場合や、痛みの出方に特徴がある場合は、これらの稀な原因も念頭に置き、幅広い視点で原因を探ってくれる内科医などに相談することが大切です。

  • 原因③夏に急増!食中毒による「感染性胃腸炎」

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    夏の腹痛や下痢の原因として、最も警戒しなければならないのが「感染性胃腸炎」、すなわち「食中毒」です。夏は、食中毒の原因となる細菌が増殖するための「温度」と「湿度」という、二つの最適な条件が揃う季節です。多くの食中毒菌は、20度くらいから活発に増殖を始め、人間の体温に近い35~40度で最も増殖スピードが速くなります。そのため、調理した食品を室温で放置したり、不適切な温度管理で持ち運んだりすると、わずかな時間で細菌が爆発的に増え、食中毒のリスクが飛躍的に高まるのです。夏に特に注意が必要な細菌には、いくつかの種類があります。まず、「カンピロバクター」は、鶏肉(特に生の鶏肉や加熱不十分な鶏肉)を主な原因とする食中毒で、比較的少ない菌数でも発症します。潜伏期間が2~7日とやや長いのが特徴で、下痢、腹痛、発熱に加え、血便が見られることもあります。次に、「サルモネラ菌」は、卵やその加工品、食肉などが原因となりやすい細菌です。こちらも下痢、腹痛、発熱が主な症状です。「腸炎ビブリオ」は、生の魚介類に付着していることが多く、刺身や寿司などが原因となりやすい、夏場の代表的な食中毒菌です。そして、最も警戒すべきものの一つが「腸管出血性大腸菌(O-157など)」です。牛のレバーや加熱不十分なひき肉料理などが原因となり、激しい腹痛と、水様性の下痢から、やがて血液が混じった血便へと変化するのが特徴です。ベロ毒素という強力な毒素を産生し、重症化すると溶血性尿毒症症候群(HUS)や脳症といった、命に関わる合併症を引き起こすことがあります。これらの食中毒を防ぐためには、予防の三原則である「つけない・増やさない・やっつける」を徹底することが不可欠です。調理前や食事前の丁寧な手洗い(つけない)、食品の適切な温度管理(冷蔵・冷凍)と早めの消費(増やさない)、そして食品の中心部まで十分に加熱すること(やっつける)が基本となります。特に、バーベキューなどのアウトドアでの食事では、生の肉を扱うトングや箸と、食べるための箸を必ず使い分ける、肉は中心部までしっかり焼く、といった注意が必要です。もし、下痢に加えて高熱や激しい腹痛、血便などの症状が見られた場合は、単なるお腹の風邪だと自己判断せず、直ちに内科や消化器内科を受診してください。

  • 原因④意外な落とし穴「寝冷え」による腹部の冷え

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    熱帯夜が続き、寝苦しさから解放されたい一心で、エアコンや扇風機をつけたまま眠りについてしまう。これは、多くの人が夏に行う習慣ですが、実はこれが翌朝のつらい下痢の引き金となる「寝冷え」の原因となっています。私たちの体は、睡眠中、特に深い眠りに入ると、日中の活動期に比べて体温が少し下がります。また、体温を調節するために、知らず知らずのうちに大量の汗をかいています。汗が蒸発する際には、気化熱によって体の表面から熱が奪われ、さらに体温が下がりやすくなります。このような無防備な状態で、一晩中、冷たい風にさらされ続けると、体、特に衣服で覆われていない、あるいは薄着になりがちなお腹周りが、必要以上に冷やされてしまうのです。お腹が冷えると、胃腸の働きに直接的な影響が及びます。まず、腸壁の血管が収縮し、血行が悪くなることで、消化機能が低下します。さらに、冷えという刺激が自律神経に作用し、腸の蠕動運動をコントロールするバランスを乱します。特に、腸が冷やされると、それを異常事態と捉え、腸の動きが過剰に活発になることがあります。腸が活発に動きすぎると、食べ物が腸内を通過するスピードが速くなりすぎて、便から水分が十分に吸収される前に、肛門まで到達してしまいます。その結果、便が水っぽい、いわゆる下痢の状態となって排出されるのです。朝起きてすぐにお腹がゴロゴロ鳴ったり、トイレに駆け込んだりするような下痢は、この寝冷えが原因である可能性が高いと考えられます。寝冷えによる下痢を防ぐためには、睡眠環境の工夫が不可欠です。まず、エアコンを使用する場合は、必ず「タイマー機能」を活用しましょう。就寝後1~3時間で切れるように設定するのがお勧めです。タイマーが切れた後も快適に眠れるよう、寝室の壁や天井に向けて間接的に風を送るなど、風が体に直接当たらないように工夫します。扇風機の場合も同様で、首振り機能を利用し、微風に設定するのが基本です。服装も重要です。夏用の薄手の長袖・長ズボンのパジャマを着用し、特にお腹周りを冷やさないようにしましょう。それでも冷えが心配な方は、「腹巻」や「夏用の薄いタオルケット」などを活用し、お腹を重点的に保温するのが非常に効果的です。快適な睡眠と、健やかなお腹を両立させるために、夏の夜の「冷え対策」をぜひ実践してみてください。

  • 大人の百日咳、長く続く発作的な咳に要注意

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    「百日咳」と聞くと、多くの人は「子どもの病気」というイメージを持つかもしれません。しかし、近年、ワクチン接種から時間が経って免疫が低下した大人の間で、百日咳の患者が増加しており、問題となっています。大人の百日咳は、典型的な症状が出にくく、診断が遅れがちになるため、長引く咳の原因として常に念頭に置くべき疾患の一つです。百日咳は、百日咳菌という細菌に感染することで発症します。感染初期(カタル期)は、鼻水や軽い咳といった、普通の風邪と全く見分けがつかない症状が1~2週間続きます。しかし、その後、「痙咳期(けいがいき)」と呼ばれる特徴的な咳の時期へと移行します。この時期の咳は、短い咳が息継ぎなしに連続してコンコンコンと続き(スタッカート)、最後に息を吸い込む際に、ヒューっと笛のような音(レプリーゼ)が鳴る、発作性の激しい咳き込みです。この咳発作は夜間に起こりやすく、あまりの激しさに顔を真っ赤にして、嘔吐したり、息ができなくなったりすることもあります。このつらい咳発作が、数週間にわたって続くのです。しかし、大人の場合は、このような典型的なレプリーゼを伴う咳発作が見られないことも多く、単に「風邪をひいた後、激しい咳だけが2週間以上も長引いている」という形で現れることが少なくありません。熱は、出ないか、出ても微熱程度のことが多いです。大人が百日咳に感染した場合、本人にとってはつらい咳で済みますが、免疫を持たない乳幼児にうつしてしまうと、無呼吸発作や肺炎、脳症といった重篤な合併症を引き起こす危険性があり、感染源とならないためにも正確な診断と治療が重要です。長引く咳で百日咳が疑われる場合、受診すべきは「呼吸器内科」または「内科」です。診断は、鼻の奥の粘液を用いたPCR検査や、血液検査で百日咳菌に対する抗体の量を測定することで行われます。治療には、マクロライド系の抗生物質(エリスロマイシン、クラリスロマイシンなど)が有効です。特に、感染初期に服用することで、症状の重症化を防ぎ、菌の排出を抑えて、他者への感染を防ぐ効果が期待できます。2週間以上続く原因不明の咳がある場合は、百日咳の可能性も考え、医療機関を受診しましょう。

  • 整形外科を受診すべき首の痛み、寝違えからヘルニアまで

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    首の痛みを訴える患者さんの大多数が、まず訪れるべき診療科、それが「整形外科」です。整形外科は、骨、関節、筋肉、神経といった運動器系の病気や怪我を専門とし、首の痛みの原因として最も頻度の高い疾患群を扱っています。では、どのような首の痛みであれば、整形外科の受診が最も適しているのでしょうか。まず、痛みの原因やきっかけがはっきりしている場合です。例えば、「朝起きたら首が回らなくなっていた(寝違え)」「重い荷物を持ってから痛くなった」「スポーツで首を捻った」「交通事故でむちうちになった」など、特定の動作や外傷が原因で痛みが生じた場合は、首の筋肉や靭帯の損傷(頸部捻挫)、あるいは筋肉の過度な緊張が考えられます。また、痛みが首の動きと連動している場合も、整形外科の領域です。「上を向くと痛い」「下を向くと首から背中にかけて張る」「特定の方向に首を回すと激痛が走る」といったように、動作によって痛みが誘発されたり、逆に楽な姿勢があったりするのは、頸椎やその周辺組織に問題があるサインです。さらに、首の痛みだけでなく、肩や腕、指先にまで広がる「痛み」や「しびれ」を伴う場合は、頸椎の病気を強く疑う必要があります。代表的なのが「頸椎椎間板ヘルニア」と「頸椎症性神経根症」です。これらは、首の骨(頸椎)の間にあるクッションの役割を果たす椎間板が飛び出したり、加齢によって骨が変形してトゲ(骨棘)ができたりすることで、腕へ向かう神経の根元(神経根)が圧迫されて発症します。この場合、首の痛みそのものよりも、腕や手の放散痛やしびれの方が強く感じられることも少なくありません。整形外科では、まず問診と診察で痛みの場所や程度、神経症状の有無を確認します。そして、「レントゲン撮影」を行い、頸椎の骨の並びや変形の有無を評価します。神経の圧迫が疑われる場合には、さらに「MRI検査」で、椎間板や脊髄、神経の状態を詳細に観察し、診断を確定させます。治療は、まず消炎鎮痛薬や筋弛緩薬の内服、湿布などの薬物療法、そして首の安静を保つための頸椎カラーの装着、温熱療法や牽引療法といった物理療法(リハビリテーション)などの保存的治療が中心となります。これらの治療により、ほとんどの症状は改善に向かいます。

  • アレルギーや薬剤性、その他の稀な原因

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    熱を伴わない耳下腺の腫れの原因は、これまで述べてきた感染症や唾石症、自己免疫疾患以外にも、様々なものが考えられます。中には比較的稀なものもありますが、正しい診断のためには、これらの可能性も視野に入れておく必要があります。その一つが「アレルギー反応」です。特定の食べ物や、ヨードを含む造影剤などが原因となり、アレルギーの一症状として、両側の耳下腺が急激に腫れることがあります。これは「ヨードおたふく」などとも呼ばれ、通常は痛みは少なく、数日で自然に軽快します。アレルギーを疑う場合は、「アレルギー科」や「内科」での相談が適切です。また、意外に見過ごされがちなのが「薬剤性」の耳下腺腫脹です。特定の降圧薬や精神安定薬、抗ヒスタミン薬などの副作用として、唾液の分泌が抑制され、二次的に耳下腺が腫れることがあります。もし、新しい薬を飲み始めてから腫れに気づいた場合は、その薬を処方した主治医や薬剤師に相談することが重要です。さらに、全身性の病気が耳下腺に影響を及ぼすこともあります。例えば、「糖尿病」のコントロールが悪い場合に、代謝異常の一環として両側の耳下腺が腫れること(糖尿病性耳下腺腫脹)があります。また、過食と嘔吐を繰り返す「摂食障害」でも、嘔吐による刺激や代償性の唾液腺肥大として、耳下腺が腫れることが知られています。これらの場合は、原因となっている全身疾患の治療が最優先となり、「内科」や「心療内科」が中心となって治療にあたります。「木村病(キムラ病)」という、アジア人の若年男性に多い、原因不明の良性のリンパ増殖性疾患でも、耳下腺や首のリンパ節に無痛性の腫れが見られることがあります。このように、熱のない耳下腺の腫れは、非常に多くの原因が考えられるため、自己判断は禁物です。まずは、喉や唾液腺の専門家である「耳鼻咽喉科」を受診し、超音波検査などで耳下腺の状態を詳しく評価してもらい、原因を突き止めてもらうことが、適切な治療への第一歩となります。

  • 新型コロナウイルス感染症

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    2020年以降、大人が高熱と咳を発症した場合、誰もが「もしかして新型コロナウイルス?」と考えるようになりました。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、季節性インフルエンザと症状が非常に似ており、初期段階での鑑別は極めて困難です。そのため、適切な検査による診断が不可欠となります。新型コロナの主な症状も、発熱(高熱から微熱まで様々)、乾いた咳、強い倦怠感、喉の痛み、頭痛、筋肉痛などであり、インフルエンザと大きく重なります。しかし、初期のオミクロン株などでは、「喉にガラスが刺さったような」と表現されるほどの激しい喉の痛みが特徴的であったり、あるいは「味覚障害」や「嗅覚障害」といった、インフルエンザではあまり見られない症状が現れたりすることもありました。ただし、ウイルスの変異に伴い、症状の傾向も変化していくため、特定の症状だけで自己判断するのは危険です。高熱と咳があり、新型コロナウイルス感染症が疑われる場合は、いきなり医療機関を受診するのではなく、まずはかかりつけ医や、地域の「発熱外来」、あるいは自治体が設置する相談窓口に電話で連絡し、指示を仰ぐのが基本的な流れとなります。医療機関では、インフルエンザと同様に、鼻の奥から検体を採取する「抗原検査」や、より精度の高い「PCR検査」によって診断を確定します。治療は、軽症の場合は、解熱鎮痛薬や咳止めといった対症療法を行いながら、自宅での療養が基本となります。しかし、重症化リスクの高い高齢者や基礎疾患のある人、あるいは症状が重い場合には、ウイルスの増殖を抑える「抗ウイルス薬」(パキロビッド、ラゲブリオ、ゾコーバなど)の投与が検討されます。COVID-19で最も警戒すべきは、ウイルス性肺炎による呼吸状態の悪化です。咳がひどくなり、「息苦しさ(呼吸困難)」「胸の痛み」「顔色が悪い(チアノーゼ)」といった症状が現れた場合は、重症化のサインです。このような場合は、直ちに医療機関に連絡し、入院治療が必要となる可能性があります。感染対策としては、インフルエンザと同様に、マスクの着用、手洗い、換気が基本となります。また、重症化予防には、ワクチン接種が有効とされています。