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まとめ。首が痛い時、どう考え、どう行動すべきか
これまで見てきたように、「首が痛い」という一つの症状の裏には、軽い筋肉の疲れから、神経の圧迫、さらには心臓や脳の緊急疾患まで、実に様々な原因が隠されています。そのため、的確な初期対応と、適切な診療科選びが非常に重要になります。では、実際に首に痛みを感じた時、私たちはどのように考え、行動すればよいのでしょうか。ここでは、診療科を選ぶための思考プロセスを整理してみましょう。まず、Step 1として、「痛みのきっかけと性質」を確認します。「寝違えた」「PC作業が続いた」など、筋肉疲労や姿勢に関連する痛みで、首を動かすと痛む場合は、まず「整形外科」が第一選択です。次に、Step 2として、「危険なサイン(レッドフラッグサイン)がないか」をチェックします。「これまでに経験したことのない突然の激しい頭痛」や「手足のしびれ・麻痺、ろれつが回らない」といった神経症状、「胸の激痛」を伴う場合は、くも膜下出血や脳卒中、心筋梗塞といった緊急疾患の可能性があります。この場合は、ためらわずに直ちに救急車を呼ぶか、脳神経外科・循環器内科のある救急病院へ向かってください。Step 3は、「首以外の伴う症状」に注目することです。「発熱や喉の痛み、リンパ節の腫れ」があるなら、感染症を疑い「内科」や「耳鼻咽喉科」へ。「頭痛やめまい」が主症状であれば、まずは危険な脳の病気でないことを確認するために「脳神経外科・内科」を受診するのが安全です。そして、Step 4として、これらの検査をしても「明らかな異常が見つからないのに、痛みが続く」場合です。強いストレスを自覚していたり、気分の落ち込みなどがあったりするなら、「心療内科」への相談も重要な選択肢となります。もし、これらのステップを踏んでも判断に迷う場合は、首の痛みの原因として最も頻度が高い運動器系のトラブルをまず評価してもらうために、「整形外科」を最初の窓口とするのが最も合理的です。整形外科医が診察し、内科的疾患や神経系の重篤な病気が疑われれば、責任を持って適切な専門科へ紹介してくれます。首の痛みは、我慢しても良いことはありません。この思考プロセスを参考に、ご自身の症状と向き合い、早期に専門医の助けを借りるようにしてください。
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喉の痛みはいつまで続くの?
ヘルパンギーナの突然の高熱と、それに続く喉の激痛。このつらい症状が一体いつまで続くのか、先の見えない不安は、患者本人にとっても看病する家族にとっても大きなストレスとなります。しかし、ヘルパンギーナの経過には典型的なパターンがあり、それを知っておくことで、精神的な負担を大きく和らげることができます。まず、ウイルスに感染してから症状が出るまでの潜伏期間が3日から6日ほどあります。その後、前触れなく38度以上の高熱で発症します。喉の痛みは、発熱とほぼ同時に、あるいは少し遅れて始まります。発症から1~2日目は、喉の奥に赤い点々や小さな水ぶくれができ始め、痛みはまだ我慢できる程度かもしれません。しかし、発症後2日目から4日目にかけてが、この病気のピークであり、最もつらい時期です。喉の水ぶくれが次々と破れて、多数の痛々しい潰瘍(口内炎)となり、喉の痛みは最高潮に達します。唾を飲み込むことさえ激痛で、食事や水分摂取が非常に困難になるのがこの時期です。高熱もこの頃まで続くことが多く、体力的にも精神的にも一番の踏ん張りどころです。しかし、この苦しいピークは永遠には続きません。多くの場合、発症から4日目を過ぎたあたりから、劇的に回復へと向かいます。まず、高かった熱がストンと下がり、体の倦怠感が和らいできます。そして、喉の潰瘍も治癒のプロセスに入り、あれほどひどかった痛みも急速に引いていきます。まだ少しはしみるかもしれませんが、水分やゼリーなど、喉ごしの良いものが少しずつ摂れるようになってきます。喉の潰瘍が完全にきれいになるまでには、1週間から10日ほどかかることもありますが、生活に支障をきたすほどのつらい痛みは、通常、発症から1週間以内にはほとんど感じなくなります。つまり、地獄のような喉の痛みのピークは、わずか2~3日間です。この事実を知っておくだけでも、暗いトンネルの先に出口が見え、希望を持って乗り切ることができるはずです。
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手足口病は一度かかればもううつらない?再感染の可能性
「うちの子は、去年、手足口病にかかったから、もううつらないはず」と考える保護者の方は少なくありません。確かに、麻疹やおたふくかぜのように、一度かかれば生涯免疫がついて二度とかからない感染症もあります。しかし、残念ながら、手足口病はこの原則に当てはまりません。手足口病は、一度かかっても、再びかかる可能性がある病気なのです。その理由は、手足口病の原因となるウイルスが、一種類ではないことにあります。手足口病は、主に「エンテロウイルス」というグループに属する、多数のウイルスによって引き起こされます。代表的な原因ウイルスとして、「コクサッキーウイルスA6、A10、A16」や、「エンテロウイルス71(EV71)」などが知られていますが、これら以外にも原因となりうるウイルスはたくさん存在します。ある型のウイルス(例えばコクサッキーウイルスA16)に感染して手足口病を発症すると、そのA16型に対する免疫(抗体)は獲得できます。そのため、次に同じA16型ウイルスが体内に入ってきても、発症を防ぐことができます。しかし、この免疫は、別の型のウイルス(例えばコクサッキーウイルスA6やエンテロウイルス71)に対しては、十分に効果を発揮しません。つまり、去年A16型の手足口病にかかったとしても、今年はA6型の手足口病にうつってしまう、ということが起こり得るのです。夏ごとに流行するウイルスの型が異なることも多く、そのため、子どもによっては、毎年のように手足口病にかかってしまうケースも見られます。また、同じシーズン中に、異なる型のウイルスに続けて感染することさえあります。このように、手足口病は何度もかかる可能性があるため、「一度経験したから安心」という油断は禁物です。原因となるウイルスには特効薬もなく、予防接種(ワクチン)も現在のところ実用化されていません。したがって、流行シーズンには、どの型のウイルスが流行していようとも、感染しない・させないための基本的な予防策、すなわち「石鹸と流水による徹底した手洗い」と「排泄物の適切な処理」を、粘り強く、そして繰り返し実践することが、子どもを感染から守るための唯一かつ最も重要な方法となるのです。