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2025年11月
  • 脂質異常症は食事と運動だけで病院は不要?

    生活

    「脂質異常症は、生活習慣病なのだから、食事に気をつけて、運動をすれば、自分で治せるはずだ」「薬は一度飲み始めると、やめられないと聞くし、まずは自力で頑張ってから、それでもダメなら病院に行こう」。そう考えて、自己流の生活習慣改善に取り組んでいる方は、少なくないかもしれません。確かに、脂質異常症の治療の基本が、食事療法と運動療法であることは事実です。軽度の異常であれば、これらの生活習慣の改善だけで、血液検査の数値が基準値内に戻ることも、十分にあり得ます。しかし、「だから、病院へ行く必要はない」と考えるのは、非常に危険な、そして一方的な判断です。なぜなら、その自己流の改善が、本当にあなたの体のリスクを十分に下げているのかを、客観的に評価する術を、あなたは持っていないからです。例えば、あなたが食事の脂質を減らし、毎日ウォーキングを始めたとします。その努力は素晴らしいものですが、その結果、LDLコレステロール値が、どのくらい下がったのか。動脈硬化の進行は、本当に止まっているのか。それを知るためには、定期的な血液検査や、頸動脈エコーといった、医療機関でしか行えない、科学的な評価が不可欠です。また、脂質異常症の中には、遺伝的な要因が強く関わっている「家族性高コレステロール血症」のように、どんなに厳しい食事制限や運動を行っても、それだけではコレステロール値が下がらない、特殊なタイプも存在します。この場合は、早期からの薬物療法が、将来の心筋梗塞などを防ぐために、極めて重要となります。これを、自己判断で見極めることは不可能です。病院へ行くことの本当の意味は、単に薬をもらうことだけではありません。それは、医師や管理栄養士といった専門家のサポートを受けながら、自分の生活習慣の改善が、正しい方向に向かっているのかを、客観的なデータに基づいて確認し、軌道修正していくための、いわば「健康のパーソナルトレーニング」を受けることなのです。自己流の努力を、無駄にしないためにも、そして、手遅れにならないためにも、まずは一度、専門家の診断と指導を仰ぐ。それこそが、本当の意味での、賢明な自己管理と言えるでしょう。

  • 朝の一歩目が痛いなら足底腱膜炎かも

    医療

    朝、目が覚め、ベッドから降りて、さあ一日を始めようと、床に足をついた、まさにその最初の一歩。その瞬間、かかとに、まるで釘を踏み抜いたかのような、あるいはガラスの破片が突き刺さったかのような、激烈な痛みが走る。あまりの痛さに、思わず「うっ」と声が漏れ、数歩はつま先で歩かなければならない。しかし、しばらく歩いているうちに、不思議と痛みは少しずつ和らいでいく。もし、あなたがこのような特徴的な痛みを経験しているなら、それは「足底腱膜炎(そくていけんまくえん)」という、かかとの痛みの代表的な病気である可能性が非常に高いです。足底腱膜炎は、その名の通り、足の裏にある「足底腱膜」という、強靭な繊維の膜に炎症が起きた状態です。足底腱膜は、かかとの骨(踵骨)から、足の五本の指の付け根に向かって、扇状に広がっており、私たちが歩いたり、走ったりする際に、地面から受ける衝撃を吸収する「クッション」の役割と、土踏まず(アーチ)を弓の弦のように支える「バネ」の役割を担っています。この重要な足底腱膜に、長時間の立ち仕事や、ランニングなどのスポーツ、あるいは加齢や体重の増加によって、繰り返し過剰な負担がかかると、その付け根である、かかとの骨の部分に、微細な断裂や、炎症が生じてしまうのです。では、なぜ特に「朝の一歩目」に、あれほどの激痛が走るのでしょうか。それは、私たちが眠っている間に、硬く縮こまっていた足底腱膜が、起床して体重をかけた瞬間に、急激に、そして強制的に引き伸ばされるからです。縮んでいた古いゴムを、いきなり強く引っ張るようなものです。炎症を起こしている、傷ついた組織が、無理やり引き伸ばされることで、激しい痛みが生じるのです。そして、しばらく歩いているうちに、足底腱膜が少しずつほぐれ、柔軟性を取り戻すことで、痛みが和らいでいく、というわけです。この「起床時の一歩目の痛み」は、足底腱膜炎を診断する上で、極めて重要な手がかりとなります。もし、あなたの朝が、このつらい痛みから始まっているのであれば、それは、あなたの足の裏が、限界を超えていることを知らせる、悲鳴なのかもしれません。

  • 脂質異常症は症状がないからこそ病院へ行くべき

    医療

    健康診断で「脂質異常症」や「コレステロール値が高い」と指摘されたものの、体に痛みやかゆみといった自覚症状が全くないため、「まあ、大丈夫だろう」「まだ若いから」と、つい結果を放置してしまってはいませんか。その判断は、実は非常に危険です。脂質異常症の最も恐ろしい点は、まさにその「自覚症状がない」という点にあります。水面下で静かに、しかし着実に、あなたの血管を蝕んでいく「サイレントキラー(沈黙の暗殺者)」、それこそが脂質異常症の本当の姿なのです。脂質異常症とは、血液中のLDL(悪玉)コレステロールや中性脂肪(トリグリセライド)が多すぎる、あるいはHDL(善玉)コレステロールが少なすぎる状態を指します。この状態が長く続くと、余分な脂質が血管の内壁に少しずつ蓄積し、血管が硬く、そして狭くなる「動脈硬化」が進行していきます。動脈硬化は、それ自体が直接的な症状を引き起こすことはありません。しかし、血管の狭くなった部分に血栓(血の塊)が詰まると、事態は一変します。その詰まった先が心臓の血管(冠動脈)であれば、ある日突然、激しい胸の痛みに襲われる「心筋梗塞」を。脳の血管であれば、麻痺や言語障害を引き起こす「脳梗塞」を発症するのです。これらの病気は、命を奪うだけでなく、たとえ一命を取り留めたとしても、その後の人生に深刻な後遺症を残す可能性があります。健康診断で指摘された異常値は、あなたの体が発している、未来の危険を知らせる重要な警告サインです。自覚症状がない今のうちに、専門家である医師の診断を仰ぎ、適切な対策を始めること。それこそが、サイレントキラーの静かなる脅威から、あなた自身の未来と、大切な家族の暮らしを守るための、最も賢明で、そして唯一の正しい選択と言えるのです。