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かかとが痛い!考えられる原因とは?
朝、ベッドから降りて最初の一歩を踏み出した瞬間、かかとに「ズキン!」と走る、ガラスの破片を踏んだかのような鋭い痛み。あるいは、長時間歩いた後に、かかとの中心がジンジンと痛む。そんな「かかとの痛み」に悩まされている方は、決して少なくありません。私たちの体重を一身に支え、歩行や走行の衝撃を吸収するという、重要な役割を担っているかかと。その酷使されがちな構造ゆえに、実に様々な原因によって、痛みのサインを発するのです。かかとの痛みの原因として、まず最も頻度が高いのが、「足底腱膜炎(そくていけんまくえん)」です。これは、かかとの骨から足の指の付け根まで、土踏まずを支えるようについている「足底腱膜」という、強靭な繊維の膜に、過度な負担がかかることで、炎症や微細な断裂が生じる病気です。特に、起床時の一歩目に、激しい痛みを感じるのが、この病気の典型的な特徴です。次に、成長期の子供や、スポーツを活発に行う若者に多く見られるのが、「踵骨骨端症(しょうこつこったんしょう)」、通称「シーバー病」です。これは、かかとの骨の、まだ柔らかい成長軟骨部分に、アキレス腱などが引っ張る力が繰り返し加わることで、炎症が起きてしまう状態です。また、中高年の女性に多いのが、かかとの骨の後ろ側、アキレス腱の付け根あたりが痛む「アキレス腱付着部炎」や、その部分に骨の棘(とげ)ができてしまう「ハグルンド病」です。ハイヒールなどで、靴のかかと部分が、常にアキレス腱の付け根を圧迫することが、原因の一つと考えられています。さらに、稀ではありますが、かかとの骨の「疲労骨折」や、神経が圧迫される「足根管症候群」、あるいは痛風や関節リウマチといった、全身性の病気の一症状として、かかとの痛みが現れることもあります。このように、一口に「かかとの痛み」と言っても、その原因は、痛む場所や、痛みの出るタイミング、そしてあなたの年齢や生活習慣によって、実に様々です。正しい治療のためには、まず、その痛みの根本原因を、正確に突き止めることが、何よりも重要となるのです。
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この数値なら病院へ行くべき脂質異常症の基準
健康診断の結果票に並ぶ、たくさんの専門用語と数字。「どの数値が、どれくらい悪いと、病院へ行くべきなの?」と、具体的な基準がわからずに、不安に思っている方も多いでしょう。脂質異常症は、血液検査における主に四つの項目の数値によって診断されます。まず、最もよく知られているのが「LDLコレステロール(悪玉コレステロール)」です。これは、増えすぎると血管壁に蓄積し、動脈硬化の直接的な原因となります。基準値は「140mg/dL未満」とされており、これを超えると高LDLコレステロール血症と診断されます。次に、「HDLコレステロール(善玉コレステロール)」です。これは、血管壁にたまった余分なコレステロールを回収してくれる、いわば「血管のお掃除役」です。そのため、この数値は低いことが問題となり、基準値は「40mg/dL以上」とされています。これを下回ると、低HDLコレステロール血症と診断されます。三つ目が、「トリグリセライド(中性脂肪)」です。これも、増えすぎると動脈硬化の原因となります。基準値は「150mg/dL以上(空腹時採血)」で、これを超えると高トリグリセライド血症とされます。そして近年、新たな指標として重視されているのが、「non-HDLコレステロール」です。これは、総コレステロールからHDLコレステロールを引いた数値で、悪玉とされるコレステロール全体の量を反映しています。基準値は「170mg/dL以上」です。これらの基準値を一つでも満たした場合、あなたは脂質異常症と診断されます。しかし、重要なのは、単に基準値を超えたからといって、すぐに薬物治療が始まるわけではない、という点です。医師は、これらの数値に加えて、あなたの年齢、性別、高血圧や糖尿病の有無、喫煙習慣、そして家族に心筋梗塞などを起こした人がいるか、といった他の危険因子を総合的に評価し、将来的な心筋梗塞のリスクがどの程度高いかを判断します。そして、そのリスクに応じて、生活習慣の改善だけで様子を見るのか、あるいはすぐに薬物治療を開始するのかを決定するのです。つまり、健康診断で「要再検査」や「要精密検査」と指摘された場合は、数値の大小にかかわらず、まずは一度、専門医による、この総合的なリスク評価を受けることが、何よりも重要となるのです。
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脂質異常症の病院選びまず何科を受診する?
健康診断で脂質異常症を指摘され、病院へ行くことを決意した。しかし、次に多くの人が直面するのが「一体、何科の病院に行けば良いのだろう?」という、意外と難しい問題です。内科なのか、循環器科なのか、あるいは専門外来が良いのか。その問いに対する最もシンプルで、そして最も正しい答えは、「まずは、お近くの内科、あるいは循環器内科を受診する」ということです。特に、普段から風邪などで通っている「かかりつけの内科医」がいる場合は、そこが最適な最初の相談窓口となります。内科は、体の不調を総合的に診断・治療する専門家です。脂質異常症の診断に不可欠な血液検査の再検査はもちろんのこと、脂質異常症と密接に関連する、他の生活習慣病、例えば「高血圧」や「糖尿病」の有無についても、同時にチェックしてくれます。これらの病気は、それぞれが動脈硬化を進行させる危険因子であり、複数が重なることで、心筋梗塞や脳梗塞のリスクは飛躍的に高まります。内科医は、あなたの血液データだけでなく、血圧や血糖値、肥満度、喫煙歴、家族歴といった、様々な情報を総合的に評価し、あなたの将来的なリスクがどの程度なのかを、専門的な視点から判断してくれます。もし、より専門的な検査や治療が必要と判断された場合は、そこから循環器内科(心臓や血管の専門科)や、内分泌・代謝内科(ホルモンや代謝の専門科)といった、適切な専門科へと紹介してもらうことができます。最近では、「脂質異常症外来」や「生活習慣病外来」といった、専門外来を設けている病院やクリニックもあります。もし、お近くにそのような専門外来があれば、そこを受診するのも非常に良い選択です。何科に行くべきか迷ったら、まずは体の状態を総合的に診てくれる内科を受診し、そこを起点として、専門的な診断と治療への道筋をつけてもらう。それが、原因不明の不調から抜け出すための、最も確実で安心なルートなのです。
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子供からもらう手足口病という親の試練
子育て世代の親にとって、夏という季節は、子供たちの成長を喜ぶ、楽しいイベントに満ち溢れていると同時に、様々な感染症との戦いの季節でもあります。そして、その中でも、多くの親が、毎年戦々恐々としながらその流行の報に耳を傾けるのが、「手足口病」です。保育園や幼稚園で、一人が発症すれば、あっという間にクラス中に広がる、その驚異的な感染力。そして、親にとっての最大の恐怖は、そのウイルスが、家庭内に持ち帰られ、看病する自分自身に襲いかかってくることです。子供からもらう、大人の手足口病。それは、子を持つ親に与えられた、過酷な試練の一つと言えるかもしれません。子供が手足口病にかかった時、親は、まず我が子のつらそうな姿に心を痛めます。熱でぐったりとし、口の中の痛みで、大好きなご飯も食べられず、泣きじゃくる我が子。親は、少しでもその苦痛を和らげようと、必死で看病にあたります。しかし、その献身的な看病こそが、皮肉にも、自分自身への感染リスクを最大限に高めてしまうのです。子供のよだれがついたおもちゃを片付け、食べ残しを処理し、そして、ウイルスが大量に含まれたおむつを交換する。その全ての行為が、ウイルスとの濃厚接触となります。そして、数日の潜伏期間を経て、親自身の体に、あの激烈な症状が現れ始めます。ここからが、本当の試練の始まりです。自分自身が、四十度近い高熱と、全身の激痛で、立っているのもやっとの状態であるにもかかわらず、病気の子供の世話を、休むことなく続けなければならないのです。自分の食事さえままならないのに、子供のために、痛くないようにと工夫を凝らした食事を作り、ぐずる子供をあやし、寝かしつける。それは、まさに心身の限界を超えた、壮絶な戦いです。パートナーと協力し、祖父母などのサポートを得られれば、まだ救いはあります。しかし、ワンオペ育児の状況下で、この事態に陥ってしまった場合の過酷さは、想像を絶します。子供からもらう手足口病は、単なる病気ではありません。それは、親としての愛情と、責任と、そして忍耐力の全てが試される、極限状況での耐久レースなのです。この試練を乗り越えるために、何よりも大切なのは、一人で抱え込まず、利用できる全てのサポートを、ためらわずに求める勇気を持つことなのかもしれません。