高熱と咳という症状は、気管支に炎症が起こる「急性気管支炎」でも見られます。肺炎との違いは、炎症の主座がどこにあるかです。気管支炎は、喉と肺をつなぐ空気の通り道である「気管支」の粘膜が炎症を起こす病気であり、肺炎のように肺胞でのガス交換に直接的な障害が起こるわけではありません。しかし、症状が似ているため、鑑別が重要になります。急性気管支炎の最も一般的な原因は、インフルエンザウイルス、RSウイルス、アデノウイルスといった「ウイルス感染」です。風邪(急性上気道炎)に続いて発症することが多く、最初は乾いたコンコンとした咳から始まり、次第に痰が絡むゴホゴホとした湿った咳に変化していくのが典型的な経過です。発熱は、高熱が出ることもあれば、微熱程度で済むこともあり、様々です。全身の倦怠感や頭痛を伴うこともあります。気管支炎と肺炎を見分けるための重要なポイントは、「胸の痛み」と「呼吸困難」の有無です。気管支炎では、激しい咳によって胸の筋肉が痛むことはあっても、肺炎に特徴的な、深呼吸で響くような胸痛(胸膜痛)は通常ありません。また、安静にしていても息が苦しい、というような呼吸困難も、気管支炎では稀です(喘息を合併している場合を除く)。受診すべき診療科は「内科」または「呼吸器内科」です。医師は、まず聴診器で胸の音を聞き、肺炎を示唆する異常な音(ラ音など)がないかを確認します。そして、肺炎との鑑別が難しいと判断した場合には、胸部X線(レントゲン)撮影を行います。レントゲンで肺に異常な影がなければ、気管支炎と診断されます。急性気管支炎の多くはウイルス性が原因であるため、抗生物質は効果がありません。治療は、つらい症状を和らげる「対症療法」が中心となります。咳を鎮めるための鎮咳薬、痰の切れを良くするための去痰薬、熱や痛みに対する解熱鎮痛薬などが処方されます。何よりも大切なのは、十分な休養と、喉を乾燥させないためのこまめな水分補給です。通常、発熱は数日で治まり、咳も1~3週間程度で改善に向かいますが、咳だけが長引く場合は、他の病気(咳喘息や百日咳など)の可能性も考える必要があります。
しつこい咳と発熱「急性気管支炎」との違い