ヘルパンギーナにかかった人が、大人であれ子どもであれ、異口同音にそのつらさを訴えるのが、尋常ではない「喉の痛み」です。経験者の中には「ガラスの破片を飲み込むようだった」「喉を焼きごてで焼かれているかのようだった」と表現する人もいるほど、その痛みは激烈です。では、なぜヘルパンギーナの喉は、これほどまでに壮絶な痛みを引き起こすのでしょうか。その痛みの正体は、喉の奥の粘膜、専門的には軟口蓋や口蓋弓と呼ばれる、のどちんこの周辺に多発する「小水疱」と、それが破れた後にできる「アフタ性潰瘍」にあります。ヘルパンギーナウイルスに感染し、体内で増殖を始めると、まず喉の奥の粘膜に、充血して赤くなった小さな斑点が多数出現します。これが炎症の始まりです。そして、その赤い斑点の中心部が、まるで露のようにぷくっと盛り上がり、白っぽい水ぶくれ(小水疱)へと変化します。この水疱の壁は、頬の内側にできる口内炎などと比べても非常に薄くてもろいため、食事や飲み物、あるいは自分の唾液が触れるといった、ごくわずかな物理的な刺激ですぐに破れてしまいます。水疱が破れた後の粘膜は、表面の上皮が剥がれ落ち、下の組織がむき出しになった、いわゆる「びらん」や「潰瘍」の状態になります。これが、白く見える浅い口内炎の正体です。この痛々しい潰瘍が、喉の奥の狭い範囲に、多い時には十数個も同時に、密集してできるため、何もしなくてもジンジンと痛む「自発痛」と、何かを飲み込もうとした時に粘膜がこすれて生じる、鋭く突き刺すような「嚥下痛」が、常に患者を苦しめることになるのです。特に、食べ物や飲み物に含まれる酸や塩分、香辛料は、むき出しになった潰瘍の神経を直接刺激するため、激痛を誘発します。この激痛のピークは、発症してから2日目から4日目あたりに訪れます。この時期を乗り越え、潰瘍の上皮が再生し始めるまでの数日間が、ヘルパンギーナとの戦いにおける最大の山場と言えるでしょう。
ヘルパンギーナの喉の激痛の正体