あれは忘れもしない、3歳の息子が保育園でヘルパンギーナをもらってきた、その数日後のことでした。最初は軽い倦怠感と微熱。「息子の看病疲れが出たかな」と、いつもの風邪だろうと高をくくっていました。普段から体力には自信があったし、子どもの風邪がうつっても大したことはないだろうと、完全に油断していたのです。しかし、その日の夜から状況は一変しました。体中の関節という関節が、まるで錆びついた機械のようにギシギシと痛みだし、体温計は一気に39.5度を指し示しました。インフルエンザを彷彿とさせる強烈な悪寒に歯の根が合わず、毛布にくるまっても体の震えが止まりません。しかし、本当の地獄はそこからでした。何よりも私を苦しめたのが、喉の痛みです。それは、ただの喉の痛みではありませんでした。鏡でライトを照らして口の中を覗くと、喉の奥一面に、白いカビが生えたかのような無数の口内炎ができており、その光景はまさに地獄絵図でした。唾液を飲み込むという、普段は無意識に行っている行為が、意識的な決断と覚悟を要する苦行と化しました。ゴクリと音を立てるたびに、喉の奥で無数のガラスの破片が突き刺さるような激痛が走り、思わず「うっ」と声が漏れてしまいます。食事はもちろん、水分を摂ることさえ困難を極めました。妻が心配して作ってくれた冷たいゼリーですら、喉を通過する瞬間の刺激で激痛が走り、涙が滲みました。夜は、痛みで1時間おきに目が覚め、一睡もできないまま朝を迎える。そんな悪夢のような二日間が過ぎ、体力的にも精神的にも限界を感じていた発症4日目の朝、ふと、喉の痛みが昨日よりも少しだけましになっていることに気づきました。希望の光が見えた瞬間でした。そこからは、薄皮を剥がすように、少しずつ回復に向かっていきましたが、完全に元の体調に戻るまでには1週間以上を要しました。大人がかかるとここまで重症化するとは。子どもの夏風邪と侮っていたことを、体の芯から後悔した、壮絶な闘病体験でした。