大人の耳下腺の腫れで、熱を伴わない場合、まず考えられるのが「おたふくかぜ(流行性耳下腺炎)」以外の、他の原因による耳下腺炎です。その中でも代表的なのが、「化膿性耳下腺炎」と「反復性耳下腺炎」です。この二つは原因や経過が異なります。「化膿性耳下腺炎」は、その名の通り、細菌が耳下腺に感染し、化膿性の炎症を引き起こす病気です。主な原因菌は、黄色ブドウ球菌や肺炎球菌などで、多くは口の中から唾液の導管を逆行して感染します。脱水状態や口腔内の不衛生、あるいは体の抵抗力が低下している高齢者や持病がある人に見られやすいのが特徴です。初期には熱が出ないこともありますが、炎症が進行すると、腫れている部分に強い痛みや熱感、赤みを伴い、高熱が出ることもあります。耳下腺を圧迫すると、唾液の出口から膿が出てくることもあります。治療には、原因菌に有効な「抗生物質」の投与が必須となります。膿が溜まってしまった場合には、切開して膿を排出する処置が必要になることもあります。一方、「反復性耳下腺炎」は、特に子どもに多いとされていますが、大人でも発症することがあります。これは、明確な原因は不明なものの、耳下腺の先天的な構造の問題やアレルギー、ウイルス感染などが関与していると考えられており、その名の通り、耳下腺の腫れを何度も繰り返すのが特徴です。腫れは片側のことが多く、痛みは比較的軽いか、全くないこともあります。多くの場合、数日から1週間程度で自然に軽快しますが、数ヶ月から数年の間隔で再発します。化膿性耳下腺炎と異なり、抗生物質は必ずしも有効ではなく、主に炎症を抑える消炎鎮痛薬や、うがいなどで口腔内を清潔に保つといった対症療法が中心となります。どちらのタイプの耳下腺炎も、診断と治療は「耳鼻咽喉科」が専門となります。超音波検査などで耳下腺内部の状態を確認し、他の病気(唾石症や腫瘍など)との鑑別を行った上で、適切な治療方針が決定されます。